小説(三題話作品: さる はいてますよ パクリ)

初デート by Miruba

まったくいやになっちゃうったらない。
 
「お願いだから早く相手見つけて」って半強制的にママの知り合いの息子さんとデートをさせられることになった。
そりゃ確かに30を過ぎていつまでも家にゴロゴロされたんじゃかなわないって言うママの気持ちも少しはわからないじゃないけれど、何も追い出すように「結婚して、早く自立してね」なんて言わなくたっていいじゃないの。
仕事しているから家事のことはママに頼っているけれど、時々はお茶碗くらい洗うし、ちゃんと食費にって一万円いれてるし・・足りないかしら、だって家ではほとんど食べないもん。
 
 
さらにママったら「結婚しても嫌なら直ぐに戻ってくればいいのだしね。」って無責任に言う。
「子供が出来ちゃったらパパとママで育てるから心配しなくていい」って、冗談じゃないわ。
 
言われなくたって相手がいれば結婚か事実婚くらいしてみたいわよ。
私は一生添い遂げられる素敵なお金持ちのちょっと年上の人を探しているんだから。
まだ、意中の人が目の前に現れてくれないだけよ。
 
愚痴ってもしょうがない。
 
待ち合わせのホテルのロビーに、ママに連れられて行った。
相手の人はすでに来ていて、ママ同士は知り合いなのでやたら賑やかに挨拶をして盛り上がっているけれど、私も相手の人もどこを見ていいかわからない状態。
 
お互い「あ、隆ですどうも」「あ〜私は玲奈です、どうも」なんて間の抜けた自己紹介を交わしたと思ったら、例のごとく「ここからはお若い二人で」とか何とか言っちゃってママ同士「どこかでお食事しない?」とか言いながら去っていった。
 
相手は思ったよりイケメンだけど、なんだかひょろりと頼りなげで、草食男子とか言われるタイプかも。
ってか、そもそも男!という匂いがしない。冷たい感じもするし。絶食男子なんじゃないでしょうね〜いやよ。
年もひとつ下だって・・ありえないし〜。
すっかり興味をなくした私に「あの〜動物園いきませんか?」と相手の隆さんとやらが聞いてきた。
初デートに動物園って、どう?と思ったけれど、直ぐに帰るのも悪いから付き合うことにした。
 
嫌々来たつもりだったのに、子供の頃遠足で来て以来の動物園散歩は意外に面白い。
キリンさんってこんなに大きかったかしら?
象さんってシワシワね。
自然のように飼育するということで、木々が生い茂りどこにいるのかわからない動物もいたけれど、サル山は賑やかだった。
 
「玲奈さん、ほら、餌にもらったバナナをパクリとくわえたお猿さんが、紙おむつをはいてますよ」
 
「あら、ほんとだ、なんだか人間の子供みたいで可愛いわね」
 
笑っていると、隆さんが「ね、前の人見てください。体に似ずちょっと大き目の靴を履いてますよ」と言う。
 
前を歩く人は中年の男性だったが、目立つ蟹股で確かに少し大きめの先の尖った革靴で、なんだかヒョコヒョコ歩く感じ。
 
突然隆さんが、前の人の真似をして歩き出した、まるでそう、チャップリンのような歩き方で、そっくり。
 
ついでにステッキを振り回すような、山高帽を取るような仕草までつける。
 
私はこれでもかというくらい噴出した。
 
前をいく中年男性が振り返ったので、隆さんもさるまねを辞め、あらぬ方を見たりしている。
 
次を歩く女性はソフトクリームを持っていて食べながら歩いている。
 
また隆さんがナヨッとしてO脚ふうに内股で歩き、溶けそうなソフトクリームをパクリとくわえるマネをする。
私は可笑しくて、でも、大声で笑えずにおなかを押さえて転げまわってしまった。
 
 
暖かい日差しのテラスカフェでお茶を飲みながらまた動物園の話で盛り上がっちゃった。
 
シャメを撮っている横顔がちょっと素敵だわ。
何考えているかわからない冷ややかな雰囲気だと思ったけれど、意外におとぼけな一面を見て、そのギャップがなんだか嬉しくて、私はずっと笑っていた。
 
 
結婚か〜
この人なら楽しいかも〜
ママの策略に乗るのは悔しいけどね。