将棋ファン必見
っ!と驚く、初手3六歩戦法 3     by 鬼河原厳蔵

②ー2 △同飛、▲3六歩


図は、初手から、▲3六歩、▽3四歩、▲3八飛、▽4四角、▲2八銀、▽3二飛、▲3七銀、▽3五歩、▲同歩、▽同飛、▲3六歩


後手△同飛に先手はじっと▲3六歩です。こう落ち着かれては、後手は飛車を引くしかありません。△3四飛か△3二飛ぐらいしかありませんが、先手は▲4六銀で飛車筋を通し、機を見て▲7六歩と角道を開ければ良いでしょう。ここでの形勢判断ですが、後手は一歩を持ったものの依然として飛車と角しか動いていません。先手はと言えば、銀は4六の地点まで進出しています。初手▲3六歩をとがめたとは、お世辞にも言えません。これで、初手▲3六歩に対して後手が△3四歩とした場合の解説を終わります。
今度は、初手▲3六歩に対して後手が△8四歩と応じたときを考えていきましょう。


①▲3六歩、△8四歩


後手は△3四歩では▲3六歩をとがめられなかったので、今度は△8四歩と飛車先の歩を伸ばしてきました。
▲3五歩
先手は構わず▲3五歩と3筋の歩を伸ばします。
△8五歩
先手の8筋が手薄なので、後手は気持ち良く△8五歩と進めます。これが本筋かもしれません。先手は大丈夫なのでしょうか。
▲7八金
飛車に成られては先手もかないませんので、ここは一旦▲7八金と受けます。
△8六歩、▲同歩、△同飛、▲8七歩
後手は労せずして飛車先の歩を切ることに成功しました。ここで、飛車の引き場所が問題です。先手の飛車先の交換を拒否する①ー1△8四飛か、自然に①ー2△8二飛でしょう。

①ー1  △8四飛、▲3八飛

後手は自分だけ飛車先の歩を切り、先手の飛車先の歩は交換させないという欲張りな手です。ここでの形勢判断ですが、後手だけ飛車先の歩を交換しており一見得をしているようですが、よく見ると後手から△4四歩と突けず、角の活用がしにくい状況です。一方、先手は▲3六飛と浮けば▲7六歩といつでも角道を開けることができます。この局面も、▲3六歩をとがめることができたとは言えないと思います。△8二飛と深く引いたときはどうでしょう。


①ー2 △8二飛、▲3八飛


後手は飛車先の歩を切ったことに満足して、元の位置に飛車を引きました。ここでそれぞれの自陣を見てみますと、先手の金は7八に上がっていて、飛車は3筋に移動しています。飛車先の歩は3五の地点まで伸びており、後手の角の活用を制限しています。それでは後手の陣形はと言えば、飛車先の歩を手持ちにしたという成果はありますが、それ以外は始めの局面とまったく同じです。もちろん、どちらが有利とは言えないと思いますが、やはり初手▲3六歩をとがめることができたとは言えないでしょう。
△8四飛と引いても△8二飛と引いても、後手は角の活用がしにくく、とがめるつもりがむしろ先手有望と言えるのではないでしょうか。


初手▲3六歩という奇手を、後手はいずれもとがめることができませんでした。もちろん先手が有利になるわけでもありませんが、初手で先手が有利になる手など存在しないのです。だとすれば、後手の角の活用を制限する狙いを持つ初手▲3六歩という奇手も、十分成立するのではないでしょうか。皆さまも、ぜひ実践でお試しください。あなたの勝率が上がりますことを、心よりお祈り申し上げます。