①▲3六歩、△8四歩
後手は△3四歩では▲3六歩をとがめられなかったので、今度は△8四歩と飛車先の歩を伸ばしてきました。 ▲3五歩 先手は構わず▲3五歩と3筋の歩を伸ばします。 △8五歩 先手の8筋が手薄なので、後手は気持ち良く△8五歩と進めます。これが本筋かもしれません。先手は大丈夫なのでしょうか。 ▲7八金 飛車に成られては先手もかないませんので、ここは一旦▲7八金と受けます。 △8六歩、▲同歩、△同飛、▲8七歩 後手は労せずして飛車先の歩を切ることに成功しました。ここで、飛車の引き場所が問題です。先手の飛車先の交換を拒否する①ー1△8四飛か、自然に①ー2△8二飛でしょう。
①ー1 △8四飛、▲3八飛後手は自分だけ飛車先の歩を切り、先手の飛車先の歩は交換させないという欲張りな手です。ここでの形勢判断ですが、後手だけ飛車先の歩を交換しており一見得をしているようですが、よく見ると後手から△4四歩と突けず、角の活用がしにくい状況です。一方、先手は▲3六飛と浮けば▲7六歩といつでも角道を開けることができます。この局面も、▲3六歩をとがめることができたとは言えないと思います。△8二飛と深く引いたときはどうでしょう。
①ー2 △8二飛、▲3八飛 後手は飛車先の歩を切ったことに満足して、元の位置に飛車を引きました。ここでそれぞれの自陣を見てみますと、先手の金は7八に上がっていて、飛車は3筋に移動しています。飛車先の歩は3五の地点まで伸びており、後手の角の活用を制限しています。それでは後手の陣形はと言えば、飛車先の歩を手持ちにしたという成果はありますが、それ以外は始めの局面とまったく同じです。もちろん、どちらが有利とは言えないと思いますが、やはり初手▲3六歩をとがめることができたとは言えないでしょう。 △8四飛と引いても△8二飛と引いても、後手は角の活用がしにくく、とがめるつもりがむしろ先手有望と言えるのではないでしょうか。
初手▲3六歩という奇手を、後手はいずれもとがめることができませんでした。もちろん先手が有利になるわけでもありませんが、初手で先手が有利になる手など存在しないのです。だとすれば、後手の角の活用を制限する狙いを持つ初手▲3六歩という奇手も、十分成立するのではないでしょうか。皆さまも、ぜひ実践でお試しください。あなたの勝率が上がりますことを、心よりお祈り申し上げます。
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