新作落語

釣れるか!よたろう by 網焼亭田楽

昔からホラ吹きってえ奴はいるものでございます。
知ってて吹くのがホラならば、知らずに吹く奴は妄想癖というのかもしれません。


「おい、よたろう」
「なんでございましょう、だんなさま」
「暇だなあ」
「あたいはそうでもありません」
「何言いってんだい。さっきから、ぼーっとしてるだけじゃないかい」
「そんなことはございません」
「じゃあ、何してんだい」
「釣りでございます」
困ったね、こいつ。暇すぎて妄想癖がでちまったよ。まあ、どうせ暇なんだ。よたろうの妄想癖に付き合ってやるとするか。
「で、どこで釣ってるんだい。海かい、川かい、湖かい」
「船でございます、だんな様」
こいつ、妄想のわりには設定が細かいね。
「船ってのは、手でこぐボートかい。それともモーターのついてるクルーザーのような船なのかい」
「いいえ、違います」
「じゃあ、何に乗ってんだい」
「宇宙船」
おいおい、こいつ大丈夫かい。
「宇宙船なんかに乗って、何釣ってんだい」
「国でございます」「そりゃあ無茶だな、さすがに国は釣れねえだろう」
「昨日は日本を釣り上げました」
「すげえな。今日は何狙ってんだい」
「中国」
「そりゃあ、大物だ。で、釣れそうなのかい」
「今、食いついたところでございます」
「ほんとかよ。そりゃあ、てえへんだ。あたしに何か手伝えることはないかい」
「歌でも歌って応援してください」
「そんなことならおやすいご用だ。ここにちょうどギターもある。さあ、ギター弾きながら歌ってやるよ」
「きたきたきたきた。あー、ダメだ」
「どうした、よたろう。あたし一人でも歌って応援してやるから。何とかお言いよ」
「そいつは、引きが足りねえ(弾き語りねえ)」


おあとがよろしいようで。