ショートショート

滅びゆく神々 by 夢野来人

「ゼウスさま、大変でございます。大洪水がやってきて、このままでは我々神々は死にたえてしまいます」
「あわてるでない。こんな時のために巨大な船が用意してあるのじゃ」
「さすがはゼウスさま。でも、さすがにすべての神を連れていくわけにはまいりません」
「それはそうじゃ。各担当神につき一対ずつのつがいを選抜して乗船させる」
「なるほど、それは良き考え。ではさっそく準備いたします」


すべての担当神を一対ずつ乗せ、超巨大宇宙船は出発した。


■□■ 45.5億年後 ■□■□■


「ゼウスさま。何が行けなかったのでしょう。このノアの箱船地球号では、神々はもはや絶滅寸前」
「最小存続可能個体数を考慮に入れるのを忘れておった」
「それは、なんでございましょう」
「個体群が長期間存続するために必要な最低限の個体数のことじゃよ」
「だいたい、どれくらいいれば存続可能なのですか」
「種によっても差が大きいのじゃが、中国のパンダなどでは50~60頭と言われておる。脊椎動物の平均で500個体から1000個体じゃな」
「少ないではないですか。わがノアの箱船には一万ほどの神々を乗せてまいったはずです」
「ところが、我ら神々の最小存続可能個体数は八百万と言われておる」
「えー、それではとても」
♪ジャンジャカジャーン、ジャジャジャ、ジャンジャカジャーン♪
「そのとおり。少なすギターということじゃ」