小説

とある休日・2  by 矢口恵子

私はとある言葉の意味を調べようとパソコンに向かっていた。聞いた事があってもそれが何を意味するのか分からないという事が多々ある。


それを1つでも解消しようと奮闘していた。
利用するサイトはウィキペディア。ここである程度の問題は解消する。今回もそれを使用。
が、難しい言葉の羅列で頭に入って来ない。


ムムム……。
読んでも全く意味が分からん。
どんどん画面をスクロールしていく。
「タルタル」という文字が飛び込んできた。
おぉ、何だか旨そうではないか。
「タルタル電解コンデンサ」とは旨そうなのか硬そうなのか分からない名前だな。


一人画面を眺めながらニヤニヤと笑っていた。
そんな時間を楽しんでいる時玄関のインターフォンが鳴った。


ピ~ンポ~ンピ~ンポ~ンピンポンピンポンピンポ~ン♪


ちっ、この鳴らし方はパンダ野郎か。いや、今日はパンダじゃないかもしれないが。以前パンダのTシャツを着ていたからそう呼んだのだった。玄関が開けられるまで鳴らされるインターフォンを止めに重い腰をあげた。


玄関を開けた途端だった。
「トナリニコシテキタヤマダデス」
そう言って抱きついてきた自称隣人ヤマダ。
これはあれか?今テレビで流れている洗剤のコマーシャルのマネか。
「良い匂いだな」
「ハイ、タッタイマトンコツラーメンタベテキマシタ。タッチデポンッ」
抱きついていた身体を起こしニッコリ笑った。
「そうか。で、お国はどこだ?」
「アゼルバイジャンデス」
「……。どこだよ、それ。気がすんだか?気がすんだなら帰ってくれ」そう言って玄関ドアを閉めた。


「ちょっと~。入れて頂戴よぉ」
元に戻った自称隣人ヤマダが情けない声で訴える。
仕方が無いので家に入れた。
勝手知ったる人の家。嬉々として定位置であるソファーの真ん中に居座った。
そこに広げられているパソコンに目をやり、「あらあ。パソコンで何してたのよ」と聞いてくるから調べ物と簡単に答えた。マウスを操作してさっきまで調べていたページを見る自称隣人ヤマダ。


「難しい事調べているのねえ」と画面をスクロールしている。
「旨そうな言葉もあるだろ?」と聞くとそんな言葉はどこにも無いと言うので「タルタル電解コンデンサ」の所をマウスで押さえ「タルタルって旨そうだろ?」と聞いた途端爆笑された。
何で笑われているか分からない私はぽかんとするしかなかった。
「相変わらずおっちょこちょいねえ。良く読んでみなさいよ。タルタルじゃなくてタンタルよ?タ・ン・タ・ル」


「え?」あぁ、読み間違えていたのか。こんな自称隣人ヤマダに笑われるなんて何という失態。不覚だ。さっきまでの高揚した気分は一気に下降した。


ソファーの上で腹を抱えて笑っている自称隣人ヤマダを眺めるしかなかったそんな最悪の日になってしまった。こいつが来るとロクな事がない。いつもいつもいつも!






参考資料:文中で登場する、最近気になる(^^)ボールドのTVCMです。ご存じない方のために。