新作落語

東京見物 by 網焼亭田楽

毎度バカバカしいお笑いでございます。今日は、与太郎がだんな様に連れられて東京の名所を見に行くようでこざいます。


「おい、与太郎」
「なんでございましょう、だんな様」
「おめえはいつまでたっても物知らずだ。ひとつ、今日は東京へ連れてってやろうじゃねえか」
「それは嬉しゅうございます」
「そうか、そうか。与太郎は東京が好きだったんかい。で、どんなところが好きなんだい」
「まずは、博物館」
「ほう。博物館のどんなところが好きなんだい」
「へい。なんたって、ミイラが生きてる」
「おいおい。ミイラはいるけど、生きちゃいないよ」
「なんだ、死んでるミイラか」
「ミイラってのは、普通死んでるんだよ。おかしな奴だね。他に好きな所はねえのかい」
「へい。銀座、赤坂、六本木」
「ほほう。なかなかシャレてるじゃねえか。さては、共通のお店か何かあるんだな。与太郎、そこでどこに行きたいんだい」
「へい、駅!」
「何だって?」
「だから、駅」
「バカだね、こいつ。せっかく、銀座赤坂、六本木へ行って、駅だけ見て帰ってくるつもりかい。他に好きな所はねえのかい」
「ありますよ、だんな様」
「どこでい」
「高い所」
「高い所とくりゃ、あれだな」
「へい、あれです」
「最近できた、あれだな」
「へい、間違いございません。あれでございます」
「そうか、与太郎も行きてえか」
「はい、大好きでございます」
「そうだろう、そうだろう。ほら、言ってみな」
「へい、ガンダム」
「何だよ、そりゃ」
「お台場にある、ほら、等身大のでつかい奴」
「違うだろう、違う。もっと、こう高い奴があるだろう。天に向かってそびえ立ってるような奴がさ」
「ああ、そう言えば」
「思い出したかい」
「へい。忘れちゃいけねえ、東京名物」
「それだよ、それ。いいから、言ってみな」
「東京タワー」
「おいおい。おまえ、何時代の人なんだよ」
「確か江戸時代」
「バカなこと言ってんじゃねえよ」
「へい、すいません」
「最近できたばかりの、東京タワーより高い奴があるだろう。おめえ、東京スカイツリーぐれえ聞いたことがねえのかい」
「へい。そいつは、とんとお知りになりません」
「なんだよ、知らねえのかい」
「そいつは、そんなに高いのですか」
「おう、あたぼうよ」
「大阪の通天閣よりも」
「決まってらあ」
「京都のローソクタワーよりもですか」
「ああ、比べ物になんねえよ」
「そいつは、たまげた」
「だから、おめは物知らずって言われるんだよ。そんなことも知らねえようじゃ、東京、大阪、京都で、一番歴史のある街はどこかってことも知らねえんだろうな」
「もちろん、お知りになりません」
「第一、日本語からしておかしいじゃねえか。京都だよ、京都。よく覚えておきな」
「へい。そんなこと(古都)とはつゆ知らず」


おあとがよろしいようで・・・
テケテンテンテンテンテン