ダイスストーリー<第1回>

カードに隠された謎 by Miruba



「チー姉ちゃん、お父さんとお母さんが旅行に行っているからって、学校サボるつもりかよ。誰かにいじめられたのか?」


隆夫は、ハムエッグを作って、トーストを焼き、少しのコーヒーにミルクをたっぷり入れて、朝食の準備を終えたが、姉の知恵が部屋からなかなか出てこなかった。部屋のドアを開けようとしたが、鍵がかかっていた。
そこで、声をかけたのだ。最近きちんと学校へ行っていたので安心していたが、また引きこもりになったんではないだろうかと隆夫は心配になった。
するとぱっとドアが開いて、くしゃくしゃの髪をしたパジャマ姿の知恵が出てきた。パジャマの柄はなぜかドクロだ。


「あ~びっくりした!脅かすなよ。メシ食う?出来てるぞ」
「ん」
「学校遅れるよ、早くしないと」
「ない。開校記念日」
「なんだ、そっか」隆夫はほっとした。
「え?!じゃ僕も休みか!しまった~っあと2時間寝てりゃ良かったぁ。あ~めっちゃソンした~」


隆夫は都立題巣中学校の一年生、姉の知恵は同じ学校の三年生だ。
知恵は中学入学一ヵ月後から登校拒否を続けていたがある事件がきっかけで、3年になってから、学校へ行きだした。




「ター君。これ。わかんないの」
知恵が数枚のカードをテーブルに広げた。全部で9枚あった。すべてに絵が描いてある。


「木、鍵、魚、亀、橋、噴水、携帯、電球、それにこれは地球か。これがどうしたの?」と隆夫が聞くと。


「モグちゃんのおじいちゃんの遺言」と知恵がぶっきらぼうにそれでも、ポツポツ話し始めた。


モグちゃんとは知恵の唯一の友達で同じ引きこもり仲間だ。何時だったかモグちゃんの話が出た時、
「まさか地下に潜るという意味じゃないのか?」とお父さんが笑ったら、当たっていたらしく知恵は一週間口をきかなかった。




モグちゃんのおじいちゃんは大金持ちでケチだけれど、孫たちには優しかった。死ぬ時に4人の子供たちへの遺産配分は法律にしたがって行われたが、
9人いる孫にはA4サイズの用紙が渡された。9個のダイスの一面を写真に撮ったもので、すべてにイラストがあった。
そして右下側の余白の部分に
【ダイスのなかイラストを切ってカードを一枚選ぶこと。それぞれ選んだイラストを小遣いとする。頭の良い子が一番得をする】と書いてあったという。


紙は2枚が張り合わせてあったために9枚のカードに切り離してみると、それぞれの裏に言葉が書いてあった。


【木】の絵の裏には、【しらかば57】と書いてある。
【鍵】には【68】だけ
【魚】→【しろはなふさ】
【亀】→【れけおかめ】
【橋】→【はいばー】
【噴水】→【はん】
【携帯】→【だいす】
【電球】→【はんといら】
【地球】→【世界一周】


「全然わかんないよ。あ・・・まてよ。世界一周ってことは、これ国をあらわしているんじゃないの?」と隆夫が言うと、
「うん、そう思った。わからないのがある」と、知恵は自分でメモ書きしたものを見せた。


「【木】はアイスランド、【鍵】はリヒテンシュタイン、【魚】は中国、【亀】にあるレケオは沖縄のことだから日本、【橋】はハイバーブリッジのあるオーストラリア、ここまでは何とかわかったけど、後がわかんない」


「チー姉ちゃん、そもそも、なんで【しらかば57】がアイスランドってわかったんだよ?」


「金持ちのじいちゃんは、アガサクリスティーの頃から切手が好きだもん。1957年の白樺という木の切手かなと思った。」


「なんだ~単純^^そこまで判っているんなら、簡単だ。はっは~わかったぞ。噴水は【ハン】って、これはそもそも噴水ではなくてスタンプ、判の絵なんじゃない?郵便切手を暗示しているんだよ。
それにハントイラって、わざとらしい。電球はライト、それを反対にした。ってことだね。携帯の切手ってあるかな?」


「ター君、携帯の【ダイス】って台椅子のことかな。ほら、鏡台なんかの椅子をおばあちゃんそういってた」


「そうか。チー姉ちゃん。もぐちゃんに、ちょっと電話で聞いて。
最初イラストをばらばらに切るとき、右端の一番下のカードはなんだったか」


「電球の絵だったと思うって」携帯を切った知恵が言った。


「やっぱりな。もぐちゃんのおじいちゃんの言葉に【ダイスのなかイラストを切ってカードを一枚選ぶこと】ってあったでしょう?それも右端の一番下に書いてあった。
<答えは台椅子の中、イラストを切ったら右側の下のカード(=角)を一枚選ぶこと>そこにライトがあったってことだから。
もぐちゃんに、『電球の絵を選ぶように』っていってあげたらいいよ」


「え?鍵かと思った」


「うん、ちょっと貸金庫の鍵みたいな想像するよね。きっと皆それを選ぶよ。
そうかもしれないけど、【鍵】の切手は100円くらいしかしないよ。
ライト兄弟といったら飛行機だ。ライトの反対だったから。飛行機の反転郵便切手は確か5万ドルくらいするんだよ。」




もぐちゃんは、結局9人のいとこ同士皆で山分けにするという話を隆夫は後で聞いた。それでも十分なお小遣いだ。
おじいちゃんがいつも足を置いていたスツール椅子のなかに、携帯が入っていて、銀行の貸金庫の番号があり、その貸金庫の中に切手が入っていたから。皆で見つけたということにしたらしい。




「チー姉ちゃん、結局頭いい、得した子は誰だったんだろ」


「もぐちゃん。私に聞いたから答えがわかったから」


「はぁ?なんですとぉ?答えを見つけたの僕なんですけどぉ」




知恵は、原稿用紙をチラつかせた。
それは先日隆夫が読書感想文の宿題を知恵に書いてくれるように頼んであったものだ。


「はいはい。チー姉ちゃんのおかげです。あ、そうだ。【五里霧中】とか、いれてないだろうね?この前もこたえられなかったんだぞ!」


知恵がニヤッと笑った。
隆夫は、知恵がわざと書いていると確信したのだった。




この作品は第1回ダイスストーリーのお題に基づいて創作されました。
9つのダイスを転がし、偶然出た9つのイラストをすべてつかって、ドリームライブラリ作家陣が作品を作り出します。