その6 幼稚園児でも知っている姜邯賛(カン・ガムチャン)

「さあみんな、おやつの時間ですよ」
「わーい」「わーい」
「今日のガムちゃんは、よく噛んで食べるのよ」
「えー?おやつにガム?」「それに、ガムにちゃん付けなんておかしいよ」
「まあまあ、冗談に決まってるでしょ。今日はみんなにカン・ガムチャンを紹介したいのよ」
「それ誰?」「誰だー?」「お前知ってるか?」
「高麗時代の英雄よ」
「何した人?」
「今からちょうど千年前くらいの1018年に高麗に侵入した契丹軍を打ち負かした人よ」
「どんな風にして勝ったの?」
「牛の皮を利用して水攻めにしたのよ」
「へえー、頭いいなあ」
「そうね、カン・ガムチャンは科挙にトップ合格したくらい頭が良かったのよ」
「ふーん。で、その人かっこよかったの?」
「それが、背が低くて不細工だったらしいわ」
「えー!がっかり。ヒーローはイケメンって決まってるのに」
「生まれた時はハンサムだったらしいんだけど、天然痘の神様を呼んで醜男にしたんですって」
「へえー、変わってるなあ」「何でそんなことしたの?」
「その頃、ハンサムは出世しないと言われていたのよ」
「カン・ガムチャン将軍はどこで生まれたの?」
「落星岱(ナクソンデ)というところよ。生まれた時、星が家に入ったから、そう呼ぶようになったのよ」
「えー?そんなの信じられない」
「他にもいろいろな伝説があるわ」
「どんな伝説?」
「高麗時代の首都漢陽(ハニャン)には虎がたくさん居て、人々を怖がらせていたの」
「それで、どうしたの?」
「お坊さんに化けていた虎を叱りつけて仲間と一緒に去らせたのよ」
「へえ凄いなあ。他にはどんな話があるの?」
「婚礼に招待された時、ハンサム過ぎる新郎を怪しいと思ったの」
「それで、それで!」
「夜、花嫁と二人っきりになるのを待って襲ったのよ」
「えー!それでどうなったの?」
「猪の正体を現したので、カン・ガムチャンが矢で射殺したのよ」
「何で、猪だって分かったの?」
「新郎が婚礼で出された肉料理に眉をしかめたり、影に尻尾が見えたからよ」
「その場で殺せばよかったのに」
「婚礼の席だと大勢の人がいて大騒ぎになるでしょ?」
「そっか!」
「韓国の三大英雄の一人だから覚えておいてね」
「はーい!」
「ところで、ガムちゃんは?」
「よく噛んで食べまーす!」
 
というような幼稚園指導要領はないと考える。


カン・ガムチャン