その11 昔話の悪役が現代の模範

韓国人なら誰もが知る昔話「フンブとノルブ」。
ノルブが兄でフンブが弟なのだが、あらすじはこうだ。
 
兄ノルブが富裕な家の財産を全部受け継ぎ、弟フンブ家族を同じ敷地内に使用人として住まわせる。
ところが、ノルブの妻の「何故フンブ一家の面倒を見る必要があるのよ」という一言で、フンブ一家は屋敷から追い出されてしまう。
子沢山のフンブは食べるのにも事欠き兄に助けを求めるものの、ノルブの妻に無碍に断られた上暴力まで振るわれる羽目に。
そんなフンブの家に怪我をした渡り鳥が舞い込み、心優しいフンブは手厚く看病し鳥は無事に旅立った。
翌年、鳥はフンブに恩返しをし、フンブは急に金持ちになる。
兄ノルブは弟フンブが羨ましくなり、鳥の足をわざと折って見返りを期待するが逆に落ちぶれることに。
その後兄ノルブが恥を忍んで弟に助けを請うと、フンブは快く兄家族を迎え入れ、兄弟仲良く暮らしましたとさ。という話である。
 
韓国で人気のレストランチェーンに「ノルブプデチゲ」というのがある。
看板の意地悪そうな顔から、「フンブとノルブ」の兄のことだろうかと尋ねてみたところ、そうだと言う。何故悪人ノルブの名前を使うのか不思議に思い、何人かの韓国人に更に尋ねたものの、満足な答えが得られなかったのだが、どうしても知りたくて、しつこく聞いていたら、意外な答えが返ってきた。というか、逆に何故そんなことが疑問なのかと変な目で見られた節もある。
現代の一般的韓国人の感覚では、弟のソルブは「独立心が無く、経済的に兄に依存し、貧乏なのに子沢山で性格が卑屈である」
一方のノルブは「向上心があり着る物や食べ物にこだわる趣味人で好ましい」ということになるらしい。
 
今の韓国人多数派の価値観を象徴しているようで妙に納得してしまった。
 


日本人観光客にも人気のあるプデチゲ専門のチェーンレストラン「ノルブブテチゲ」