新作咄(三題話作品: 犬 梅 映え)

現代お風呂事情  by  網焼亭田楽

毎度バカバカしいお笑いを。

最近は温泉ブームでございまして、猫も杓子も犬も柄杓も温泉目がけてレッツゴーでございます。
昔は温泉と言えばお年寄りの行くところというイメージでしたが、近頃は若い娘さんなんぞも秘湯の旅なんてお出かけしているようでございます。ところが、私も嫁さん連れて行ってみたんですが、どうもテレビで見てるのと違うようでございます。
「どうだい、おまえ、ちゃんとバスタオル巻いて入ったのかい?」
と聞きましたところ、
「何言ってんだい、おまえさん。そんな人は一人もいないよ」
って言われてしまいまして、そう言えば、男風呂にもタオルを巻いた人はいませんでした。どうも、テレビでの温泉に入るバスタオル巻きスタイルはレアなようでございます。
まあ、しかし、温泉地へ出向けるのもそうはそうは行けるものではございません。
そこで、今流行ってまいりましたのがスーパー銭湯でございます。
どんなところかっていうと、昔ながらのお風呂屋さんをちょいとハイカラにしたようなところでございます。
まず、お湯の種類がいろいろあるのが特徴です。昔の銭湯なら、大風呂、薬湯、せいぜいあっても電気風呂まででございます。そう、私の苦手な電気風呂。子供の頃は、どうにもあのピリピリ感がいけませんでした。あれはきっと何かの罰ゲームに違いないと思っているぐらいでした。
ですが最近のスーパー銭湯ときたらバラエティに富んでおりまして、サウナも付いて入れば、酸素風呂、炭酸風呂、水素風呂なんてものまであるところがあります。
壁にしたってスッキリしていて、昔のタイル張りの壁なんて使っていません。もちろん、壁に絵なんて描いちゃありません。
ええ、ええ、富士山もなければ、松、竹、梅だってありません。湯煙の向こうに富士山が映える光景もなかなか捨てがたいものではございましたが、現代は機能重視の銭湯となっております。
ジェットバスは疲れを癒しますし、電気風呂は凝りをほぐします。酸素風呂はお肌の角質を取り除き滑らかにするようですし、炭酸風呂は血液に酸素を取り込み血行が良くなるそうでございます。
水素風呂に至っては、身体の中の活性酸素とくっ付いて中和させる働きがあるとか。いずれどれをとっても良いお湯ばかりでございます。
ただし、皆さん。気をつけていただきたいことが一つだけございます。
どれもこれも良いお湯なんですが、水素風呂に酸素風呂のお湯を混ぜることはおよしください。
それだけはおよしください。ああ、ダメですよ。混ぜちゃダメですってば。
せっかくのお湯が、、、水になっちまう

お後がよろしいようで…