小説(三題話作品: 犬 梅 映え)


ある復活例 by  ショウ


“寒梅に ポチ寄り添いて 映え陽恋う”
 
 晴れやかな成人式を前にプチ失恋に落ちた聡美には、梅の木の根元でうつろな表情で寝そべっている愛犬のポチまでが陽を恋う未練に見えてしまうのだった。
 孝信の二股三股、時には五股という噂を聞いてから、独占への自信を無くし、幼馴染の玲子に相談した時、――百人の女と一人の男という世界と、その反対の世界では、一年後、明らかに百人の女の世界には百人の子供ができる――そして種の保存よ。という理屈を聞いたのはいつだったか、慰めのように、言い訳のように思い出した時、玲子からの電話が鳴った。
 「何言ってんのよ、一人の男の子供を三人の女で一人づつ産むのと三人の男で女一人が子供三人産むの、どっちが楽か考えてよ」
「そんなぁ・・・愛情とか、どうなるの?」
「甘いわ聡美。今の日本、人類滅亡の危機なのよ。解る?」
「ンーン、でも・・・」
「デモがテロでもいいの。男は子供産めないんだから」
「そりゃぁ、そうだけど倫理観っていうか・・・」
と、歯切れの悪い聡美に、
「ふーん、じゃぁさ、花や木とか犬猫に、それ、有る?」
「そんなぁ、無いと思うけど」
「そぉ、無いの、だから本能で繁殖するじゃない」
「人間は、女も本能で?」
と、聡美が聞くと玲子は、
「優秀なDNAの男を女同志が共有する事なのよ」
と言われ、聡美はくすぐったさをこらえながら、
―― 孝信を誰かと、共有出来るかしら ――
と、頬を染めた。