パリ郊外・ポワシーへ by Miruba

パリの西30㎞にある町 POISSY に行く。
ポワシーは、セーヌ河畔の 人口・37,000ほどの町だ。
 

5世紀にはすでに農業と漁業で栄え王宮があったようだ。現在は、車産業が盛んだ。
1214年、聖王ルイが洗礼を受けたことで知られている。その洗礼台は、現在のノートルダム教会のなかにあるが、長い間この聖台の石を削った粉末を呑むと熱病に効くと信じられており、今はその形すら判別できない。


La Collegiale Notre-Dame コレジアルノートルダムが、町の中心にある。
11世紀から12世紀に建てられたロマネスク様式の教会である。
美しく花のポールで飾られており、市民に愛されていることがわかる。


教会の近くに Musee du jouet 玩具博物館がある。
テレビが出てくる前の玩具や人形が飾られている。
 

玩具博物館の中庭


中庭には色とりどりの落ち葉がすでに秋が深まっていることを教えてくれた。


ポワシー行の列車に朝食をしないで飛び乗ったので、昼前というのにお腹が空いた。ベンチに座り、持ってきていた「柿の種」を出して食べていた。
6袋ほどがミシン目で繋がった小袋のタイプだ。
 

フランスではお菓子はほとんどチョコレートかクッキーのような甘いものが多く、日本のおかきやおせんべいが私たち日本人には程よい。

もちろんポテトチップスなどフランスにもあるが、最近まで売っているのはお酒のおつまみの棚コーナーだった。つまり甘くなければ、反対に塩辛いものが多いのだ。
お醤油味の程よいおせんべいはたまらない。
最近ではスーパーで中国産のおかきが売ってはいるが、やはり繊細な日本のおせんべいにはかなわない。

ふと、男の子がじっと見ているのに気がついた。

「Bonjour! ボンジュール 食べてみる? 少し辛いけれど大丈夫かな?」
「Merci, madame. ありがとう、マダム。 平気だよ。ムタルド(辛子)好きだよ」との答え。
-カライ-と言いながら手が止まらない。

「美味しいね。これは中国のお菓子?」と聞いてきた。
「Non、それは日本の<おせんべい>よ」
よほど美味しかったのか、男の子は皆食べてしまった。
私はまだ2口くらいしか食べていなかったのに。
「この近くに住んでいるの?」と尋ねると。
「ウン、そこの刑務所にお兄ちゃんがいるから、会いにきたんだ」
「え? prison? プリゾン?」私は思わず繰り返してしまった。
そういえば、玩具博物館の前に、軽犯罪者の更生施設があるとは聞いていた。看板もないので見落とすが…

「ウン、でもお兄ちゃんは悪くないんだよ。パパがママンをいつも殴っていたからさ。ママンを助けただけなんだ」
「そうなんだ。長くここに居ないといけないの?」
「ううん、パソコンの学校(職業訓練)が終わるから、もうすぐお家に帰れるんだって」
「そう、よかったね」
そこに、ママンが小走りにやってきて「ニコルゴメン! 手続きが長くなった、行こう」と私に笑顔をみせて、男の子に声をかけた。

私は、ベンチを立ち上がり、もう一袋持っていた「柿の種」の小袋を男の子に差し出した。
「え? いいの? メルシーマダム。お兄ちゃんに持っていってあげるよ」

男の子は、可愛い笑顔を見せてくれた。
<了>