シャンパンを味わいにランスへ by Miruba

 
秋風が気持ちの良い日々だ。
朝をゆっくりして、昼近くに出かける。今日はあちこちでストをやっているとかで、交通情報を聴いたら西の方は道路が混んでいるようだ。そこで車を東に向ける。
久しぶりに、ランスの方へ行ってみようか。
ランスの大聖堂に行く前に、シャンパーニュ地方のブドウ畑を見に行くことにする。
カーブ(酒蔵)に寄って、デギュスタシオン(試飲)をしてみたい。


シャンパーニュという名は、田舎という意味のCampagne/カンパーニュからきている。
そして地名のシャンパーニュは、La CHAMPAGNE/ラ・シャンパーニュと呼び、発砲酒であるシャンパンは、Le CHAMPAGNE/ル・シャンパーニュと言う。紛らわしい。
日本では炭酸を含んだ発泡性のワインのことをシャンパンというが、本来は、シャンパンと呼んでいいのは、シャンパーニュ地方で採れたブドウで造られた発泡タイプのワインのみだ。世界でブランドが保護されるためTRIPS協定の地理的表示に指定され、シャンパーニュ地方で生産され、「AOCアペラシオン・ドリジーヌ・コントロレで定められた製法で造られたもの」でなければ<シャンパンの名称>を使うことは許されず、勝手に使うと違法となる。
 シャンパーニュ以外の産地、製法で製造された発泡性のものを任意の名称として、スパークリングワインと表記しているのだ。つまり、シャンパンはシャンパン、スパークリングワインはスパークリングワインで分けてほしい。と、シャンパーニュの人が言ってた^^

ランスの南西に位置する30kmのマルヌ川が流れ肥沃で広大な土地が延々と広がり、フランスの農業国としての強さを見せつけられる。

少し高台に、ローマ法王ユーバンの(台座も入れると)全長25mの荘厳な像が聳え立っている。修復され式典が行われたばかりという。日本読みでは「ウルバヌス2世」、11世紀のローマ教皇で1095年第1回十字軍の派遣を呼びかけた人物。平和を願う宗教が戦争を引き起こす皮肉は昔からあったのだねぇ。


Châtillon-sur-Marne/シャティヨン シュル マルヌの中心部。 
人口700人弱だからか、人影も見えない静かな田舎町。ゴミ一つ落ちておらず清潔に感じる。


レストランは見渡す限り、このブドウ看板の前の店一件。大衆的なメニューだけれど、椅子が洒落ていて高級感があった。椅子一つで店の雰囲気は変わるものだ。
もちろん飲むはシャンパン^^
  

シャンパンで良い心持になったので、少し街中を歩く。
 ①昔の教会横 味のある景色だったが・・・


②現在の教会横 なぜか家が3軒ほど無くなっていて、壁隣りだった家にはブルーシート、何と教会の屋根にはトタン板が張ってある。おまけにサビている。修復する予算がないのだろうが、酷い荒れようだ。


小さな観光案内所を覗くと優しい中年のおばさん職員がいて、「教会も見る?」と聞いてくれすぐ隣にある教会の鍵を開けてくれた。
 Notre-Dame de Châtillon-sur-Marne/シャティヨンシュルマルヌ ノートルダム教会だ。
 

教会の内部。ステンドグラスもはめられていないので、教会内は明るい。


伽藍の部分や天井は板で修復されていて、倒れそうなところには斜交いがしてある。修復費用を賄うだけの予算は取れないのだろう。フランスも日本も小地方はどこも同じような問題を抱えている。


ビヴィレー・スー・シャティヨン/Villers-sous-Chatillonにあるヴィレー城/Chateau de Villersに寄る。有名なカーブは昔散々回ったので、ちょっとはずれを覗いてみる。
それでも素敵なお城。1872年創業のバロンドブロー/BARON de BROU。
http://www.baron-de-brou.com/fr/galerie.php
 

ちょっとお下品な言い方ですが~シャンパンでお稼ぎあそばしていらっしゃるご様子^^
やたらスノッブなオーナーが(生まれの良さともいえる上品さ)、お昼過ぎだったので(シャンパンをお飲みになったのだろう)すでにちょっと出来上がった感じでお城から出てきてくださり、私たちのためにデギュステ用に新しいシャンパンの栓を開けてくださった。
爽やかで飲みやすいシャンパンだった。
 

ブドウの圧縮機。これは今は使われておらず展示用、工場は別にあるとのこと。


色々説明してくださったお礼も兼ねて、一本買う。25ユーロ まあまあね^^
 


ランスへ向かう
ランスはシャンパーニュ地方の中心都市で、人口20万、パリの東北東142kmに位置する。
 世界遺産のひとつ、ランスのノートルダム大聖堂(Cathedrale Notre-Dame)は、1121年着工。様式はシャルトルのノートルダム大聖堂をなぞらえゴチックだが、装飾的な飾りはより洗練されているという。
 観光客も多く、先ほど寄ったシャティヨンの小さなノートルダム教会と違って、ランスの教会は常に修復がなされている。前回訪問した時は広く修復のテントを見たが、今回はファサードの真ん中だけが修復中だった。
 

世界的に有名なのは西ファサード、13世紀の彫像「微笑む天使」(一番右)は、修復が終わり綺麗な顔を見せている。


816年ルイ1世が戴冠式を行った事が象徴的とされ、それから4世紀後1223年ルイ8世から、シャルル10世までの25人の王様がこの大聖堂で聖別式、戴冠式など盛儀の祭式を行った。


百年戦争真っただ中で、イギリスに対し連敗の連続ですっかり疲弊していた時に国民意識の火付け役となって現われたのがジャンヌダルク。1429年7月17日 ルイ7世の戴冠式にはジャンヌダルクも列席していたという。

1914年、第一次世界大戦で空襲により大聖堂は激しく燃え、約半数のステンドグラスが失われた。1万4千戸あったランスの街の家々も焼き払われ、戦火が終わった時、住める家はわずか60戸だったという。
 戦後の修復事業の多くはロックフェラー基金で行われ、今ではとても綺麗なステンドグラスを見ることができる。
 ロックフェラーなどお金持ちはこのようにノブレス・オブリージュ noblesse oblige (高貴さは義務を強制する=財産、権力、社会的地位の保持には責任が伴う)と言っていいのか地域に貢献してきているが、節税などの目的があったとしても、その行為は称えられるべきだと思う。
その基金があったからこそ、いま私たちは美しい教会を観賞できる。
 個人や企業の芸術の収集もそうだが、一般公開してくれるなら大いに推奨したいところだ。どこの国の人が持っていようと、世界の財産に違いないし、誰もが見ることが出来るのだから。
 中にはシャガールのステンドグラスもある大聖堂の前にはジャンヌ・ダルクの騎馬像が設置されている。




ランスもシャンパーニュも歴史のある街でパリから日帰りが出来るので、気軽に再訪したいところだ。
気持ちの良い秋の日はもうすぐ終わり。