第6回 喜怒哀楽のミックス音楽  
フーチー クーチー マン by  マディ・ウォーターズ

さて、皆さん!
 
きょうも素敵なブラックミュージックを紹介しちゃいますよ。
今回はブルースについて、さくっとお勉強しましょう。
マイルス・デイビスがジャズの帝王、ジェイムス・ブラウンがファンクの帝王なら、ブルースの帝王はこの人、マディ・ウォーターズです! 50年代ぐらいから活躍し、ロックンロールの誕生に大きな影響を与えました。


ダンスビートというよりも。ずしんと重い音に感じますね。マディのヴォーカルは唾が飛んで来そうな迫力です。しかしながら、それは暴力的ではなく、男が聴いても艶っぽいものです。

ブルースはもともと、アメリカ深南部のアフリカ系黒人たちの間で、19世紀の後半頃生まれたと言われています。基本は12小節の決まったコード進行で、日常の憂鬱なこと(ブルーなこと。複数形にするとブルースですね)や、ときには幸せなことをギターの伴奏にのせて歌ったものです。リズムはシャッフルといって、4拍子で「タッカ・タッ・タッ・タッ」と1拍が、はねるよう感じになるのが特徴的です。

日本の歌謡曲で「伊勢佐木町ブルース」とか「中の島ブルース」などというのはいわゆるブルース形式ではなく、ふられて悲しいとか、ブルーな心情を歌うというところからだけブルースと名乗ったものです。

しかし、黒人のブルースは、差別や格差社会での苦渋をベースにし、ストレートに感情を表現する音楽でありながら、その中には多様な思いが感じられます。曲調に漂う哀感は悲観的なものではなく、逆境を生きる力強さや明るさもあって、聴く者に元気を与えます。

マディ・ウォーターズの迫力満点の明るさと、独特の陰翳、両方を感じてください。

最後にマディがブルースについて語った言葉を紹介しましょう。
「ブルースは音符と音符の間の溝を表現するんだ」
言い得て妙です。
実際に、ギターの弦を指で引っ張るチョーキングや、弦の上を指やガラスや金属製のバーをすべらせるスライドというテクニックにより、音符には書けない音を出すことが、ブルース独特の雰囲気を醸し出し、一口には言えない複雑な心情を表現しています。黒人の歴史や文化を知って、心の襞の奥を知る事が、ブルースを深く理解するのには必要だと私は思っています。


それでは、また!


フーチークーチーマンはブルースの定番曲としていまでもセッションなどで
よく演奏されます。これは1981年に行われたマディ・ウォーターズと
ローリングストーンズのセッションです。


ブルースの歴史は、ブラックミュージックの黎明期の歴史です。