第10回 聖地ニューオリンズ
「エイント ノウ ゴー ホーム 」by クラレンス・ヘンリー
さて、皆さん!いよいよ、お別れの回となりました。
今回は、曲はしばらくお預け。ブラックミュージックにおける地域性みたいなお話しをします。実は、地域的特色や所属レーベル(音楽会社)も黒人音楽を楽しむ要素のひとつです。
クリックでより詳しい地図へ移動たとえば、一口にブルースと言っても、ミシシッピ川流域を中心とした「デルタ・ブルース」と「テキサス・ブルース」が二本柱としてあります。差別感情が強かった南部から北部へと多くの黒人が移動し、シカゴで都会のブルースが誕生しました。その途中のメンフィスやアーカンソー州等もブラックミュージックの歴史では重要な都市です。特に双方の地のラジオ番組がブルースを広めた時期がありました。
自動車産業等で人手も欲しかった北部のデトロイトでは
モータウンが誕生します。(モータウンとは、アフリカ系アメリカ人が所有するレコードレーベルで、ブラックミュージックを中心にすえて大成功しました) 隣の「シカゴ・ソウル」はより通好みです。これら北部は、乗りの良いサウンドが特徴です。
一方、「メンフィス・ソウル」と呼ばれる一派は、バラードにいいものがあります。お隣のアラバマ州と合わせて、演奏の職人集団がおり、ニューヨークのアトランティックといった大レコード会社でも、歌手を南部に派遣する事を“メンフィス詣で”や“南部詣で”と言ったりします。
他にも、甘さと渋みが同居する「フィラデルフィア・ソウル」や「メンフィス・ソウル」から少々湿気を抜いた「マイアミ・ソウル」などなど、いろいろとあります。
さてそんな中でも、地域性が濃厚と言うか、一度知ってしまうと、魅力にはまるのが「ニューオーリンズ」です。正確にはルイジアナ州全般ですね。
ニューオーリンズはジャズ発祥の地として有名ですが、敢えてR&B方面をご紹介します。そう言えば、ここはフランス系移民が多く、他の土地にはないアコーディオンを使ったブルース・ザディコが根強く残っていたりもします。
そんなニューオーリンズのサウンドを特徴づけている一つに“ユルさ”があります。例えば、ローリングストーンズがカバーしているブルースマン、スリム・ハーポなども伊達男的ブルースなんですが、ユルユルモードが根底にあり、何とも好感が持てます。
それでは、何とも愉快で踊り出したくなる一曲でお別れしましょう!
<おわりに>
ここまでおつきあい頂き、まことにありがとうございました。じつはたった10曲でブラックミュージックを語り尽くすことは大変難しいことでした。ブラックミュージックの全貌というより、現在のブラックミュージックの根っこになった曲しか語ることができませんでした。これらの根から、いまや音楽の果実がたくさん実っています。ブラックミュージックには、まだまだいい曲がたくさんあります。あなた好みのものをあれこれ聴いてみてください。
また機会がありましたらお会いしましょう。ではこれにて本当に、バイバイ。