その4 いろいろな意味で整形天国
2014年から2015年にかけて、ある製薬会社がアジア太平洋地域13か国の女性約5000人にアンケート調査を行ったところ、韓国人女性の97%が「美しさの維持は人生において重要だ」と答えたのだそうだ。
ボトックスなどを含めると約40%が美容医療を経験したことがあり、今後やることを検討している女性を含めると8割強に上ることが分かった。
8年ほど韓国に暮らしてみて、整形自体あまり珍しくないという印象だ。
ソウルの美容整形外科が集まっている地区を歩けば、手術直後と思われるマスク着用女性によく出会うし、田舎でも、いかにも整形顔な女性をちらほら見かけることがある。
「日本に留学する前に二重瞼の手術をしました」(20代学生)
この子は残念ながら術前の顔の方が可愛かった。
「祖母に勧められて二重瞼の手術をしました」(30代親戚の会社手伝い)
彼女は術前の一重瞼が想像できないほど綺麗に仕上がっていた。
「社長に勧められて一週間休暇をもらって整形しました」(30代エンターテイメント系社員)
彼女は知り合いの整形外科で施術したせいか自然だった。
と、体験者の話を聞けることも多い。
男性サラリーマンの話によると「目の二重瞼の手術を加えれば90%以上の職場の女性が整形手術をしていると思う」ということで、辛口男子高校生によると「若い女性の顔は、どれも同じに見える」のだそうだ。顔ではないが、前出の男子高校生によると「少女時代」の女の子達全員の足には注射の跡があって、それは脚を細くするための注射の跡だと教えてくれた。その話を裏付けるように、後日ぽっちゃり目の女子学生が「いざとなったら注射で脂肪を抜くから大丈夫です」と言っていたのを聞き逃さなかった。
整形外科の繁忙期のピークは11月に全国一斉に行われるスヌン(日本のセンター試験に相当)の後から大学の新年度が始まる3月までの間で、イメチェンを図ろうとする女子高校生達で賑わう。
この時期に全体の約15%が整形手術をするそうだが、次のピーク時は就活前で、履歴書に添付する写真の印象を良くするための整形手術だ。ある会社の人事担当社員によると、履歴書の写真が良くなければ書類審査には通らず、男性とて例外ではないそうだ。
整形手術という選択肢があるのに顔を綺麗にしないのは、経済的に余裕がないか努力不足と見なされるとさえ言う。歌手や俳優を職業に選ぶなら、事務所からデビュー前に整形手術を勧められるそうだが、手術費用は自腹だと言う。
さて、知人のお嬢さんは鼻を高くする手術を、美容整形外科医院が乱立するソウル市アックジョンのクリニックで受けたが、暫くして不具合が見つかり総合病院で診てもらったところ、軟骨が飛び出す恐れがあると診断され、手術のやり直しを検討していた。
昨年だったか、太り気味だった有名歌手が、かかりつけの整形外科に行ったところ、頼みもしない胃の狭窄手術を施され、術後の経過が悪くて亡くなった事件があった。この整形外科医は有名人に自分が得意とする胃の狭窄手術をしてダイエットの成果を上げることを宣伝材料にしたかったようだが、その後同クリニックで一般人の死亡例が報告され現在医療行為は行えない状態だとウェブニュースで見かけた。
釜山の整形外科では、術前術後の写真を患者に無断でパンフレットに使用し、日本人女性から訴えられたばかりだ。また、江南(カンナム)の整形外科では最近立て続けに死亡例が報告されているので、安易に美容医療行為を受けることは勧められない。