その13 ハングル世界化プロジェクト

2009年8月、インドネシア少数民族チアチア族が、公式文字としてハングルを採用したことが、嬉しいニュースとして韓国で話題になった。
 
「ハングル」は近年考え出された言葉で、それ以前は「訓民正音」と呼ばれていた。チアチア族がハングルを公式文字に採用したきっかけは、訓民正音学会からの働きかけが大きかった。背景には「ハングル世界化プロジェクト」があり、ソウル市長やソウル大学言語学科教授の思惑ともぴったり合ったようで、2008年7月にはチアチア族教師らを韓国に招き、ハングル教科書編集作業が始まっていた。
 
途中、寒さとホームシックで帰国しようとするチアチア族の教師達を何度も説得し、ようやく教科書が出来上がったと聞く。しかし、その後、多額の経済援助をちらつかせていたソウル市長が任期途中で辞職したり、インドネシア政府も難色を示したため、プロジェクトは中断の危機に晒されていたようだ。
 
そんなチアチア族の皆さんの話題を久しぶりにネットニュースで見かけたのが、2012年の6月21日(ハングルの日)だった。チアチア族の教師達が自主的にハングルの研修に来たようなタイトルだったが、勿論韓国側の招待だろう。
 
ところで、チアチア族は自分たちの言語を表記するためにハングルを採用しただけなので、韓国語は全く話せないため、研修がインドネシア語でされたことだ。更に面白いのは、チアチア族教師達が発音の特訓を受けさせられたことだ。
 
韓国人の中には「ハングルであらゆる国の言語が表記できる」と真面目に信じている人が居るが、その理論を持ってすれば、チアチア族の言語も現地の人が話す発音で表記でき、チアチア族が発音で困るはずは無いはずなのだが。