その17 放送事故? 安重根(アン・ジュングン)を豊臣秀吉!
2016年5月。「安重根(アン・ジュングン)の顔を見て豊臣秀吉と解答、人気アイドル批判殺到」というウェブニュースのタイトルを見てわが目を疑った。アン・ジュングンを知らない韓国人がいる事実に驚かされ、徹底的に非難されることは必至で気の毒にすら思えたくらいだ。韓国人として致命的なミスと言っても過言ではなく、日本人の私から見ても痛すぎる失言だ。
韓国親善大使を務めているという人気女性アイドルグループAOAのメンバーが、バラエティ番組の中で、有名人や歴史上の人物の写真を見て名前を当てるというコーナーがあったらしい。スポーツ選手などの名前はスラスラ答えられたものの、歴史上の人物の名前はなかなか出てこず、それならばと親切心で思いついたかどうかは分からないが、韓国人なら誰もが知っているはずのアン・ジュングンの写真を出したものと思われる。
写真を見たアイドルはが、まず発した名前が
「金斗漢(キン・トカン)?」
別人でしかも日本語発音だったのでこれも問題視されているのだが
「こんなの、よく分からなくて~」
と言うのを聞くに及んでイライラしたであろう司会者が
「ヒントは伊藤博文」
と助け船を出したしたところ、スマホで検索していたアイドルが
「豊臣秀吉?」
と言ってしまったというのだから、さあ大変。
AOA側が収録後にこのとんでもない間違いに気づき、問題シーンのカットを要求したにも関わらず放送されたという経緯もあり、テレビ局側の責任も問われている。早速この発言をきっかけにAOAのミュージックビデオにも火の粉が飛び
「映像の中に戦犯企業の自動車が映っているが、スポンサーなのではないのか?」
と指摘され、韓国TOYOTAや韓国HONDAまでとばっちりを喰らってしまったのだ。
アン・ジュングンに関して簡単におさらいをしたいと思う。
日本ではアン・ジュングンを「伊藤博文を狙撃した韓国人」として記憶している人がいるかも知れない。裁判の過程で明らかになった15か条の動機は、当時日本の新聞にも掲載され、伊藤博文に関する誤った情報も含まれていたことから、単なるテロリストだと言う人もいる。
韓国サイトのアン・ジュングン伝記によると、裕福な家庭に生まれ高い教育を施されたものの、勉強よりも狩猟を好んだとされ、親の思想の関係で韓国内で引っ越しを余儀なくされたり、中国へ亡命したりもしている。10代で結婚し家庭を持ったが、独立運動に身を投じ、何度か失敗を経験している。伊藤博文を狙撃したころは、同志達と同義断指会を結成し、会の名が示すように指を切断して暗殺遂行を誓い合っていた。伊藤博文狙撃事件が起きたのは1909年10月、死刑を求刑されたのが1910年2月で執行されたのが同じ年の3月だ。彼の行動は国への功績と認められ、1962年には建国勲章を与えられ、1970年にはソウル市内にアン・ジュングン記念館が建てられ、韓国では彼を義士と呼んで大いに尊敬している。
韓国の自尊心の象徴とも言えるアン・ジュングンを、よりによって朝鮮半島侵略を命令した悪の権化と教えられている豊臣秀吉と間違えてしまうなんて。ポスト少女時代を目指していたアイドルグループAOAの運命やいかに、である。