小説(三題話作品: ○活 TRY ねずみ)

活動するお腹 by Miruba

○活というと、就活やら婚活など聞き慣れた言葉もあるが、最近では終活やら墓活、涙活など多種多様な30種類近くの○活があるのだと聞く。
いずれにしても、「何かの活動を起こす」という前向きな言葉なのだろうから、自分も一つくらいはやってみようかと思ってしまう。
婚活も妊活も無理だし、就活や留活(留学活動)など、この年ではなかなかの難関だろう・・。さりとて「終活や墓活なんてまだ早いわ、恋活くらいしなくちゃね」とか勝手に若い気でいるところが悲しい。
と言う訳で、これならとTryしたのが「腸活」である。
腸活とは、「腸内環境を整えて、健康な体を手に入れること」で、長生きのサーチュイン遺伝子の活性化に繋がるかもしれないゾ。
働く女性900人に聞いたというアンケートがある。「腸活をしている」という人は24.7%「まだだけれど、やってみたい」は58.5%で、約8割以上もの人が「腸活」に興味を持っているという結果になったという。(オズモール調べ)
「腸活をしようかなって思っているの」と私が言うと、常に動いていないと気が済まないネズミ年の母が「私もやろう」と言い出した。「この年になったら、体に悪いと言われようと、中性脂肪だ、塩分控えめと言われようと、気にしないで、好きなものを食べて飲んで残りの人生楽しむわ」とか言っているくせに、テレビショッピングの健康サプリメントを片っ端から手に入れたがるお人だ。
 
腸活は、まず食事と運動である。体内時計を正常に保つことも大切だ。食事は発酵食品や乳酸菌など腸内フローラを育てる食品をよく噛んで食べる。食べ過ぎない。寝る3時間前には食事を済ませる。睡眠は十分に、お酒はほどほど煙草はダメ。副流煙対策も必要。運動も、スロージョギングかウォーキング。お風呂にもゆっくり入り、フットマッサージやストレッチ運動もひととおり……
……ん? なんということはない、生活習慣病予防対策と何ら変わらない。
 
母は朝から健康に良いとされる食べ物を食卓に所狭しと並べて、「半分も食べられない」とお茶でご飯を流し込む。「私、朝方から起きちゃうから昼間眠い」「足が痛いもの車じゃなきゃ、買い物にもいけない」と散々文句を言っていたが、運動になるからと草むしりをしていて地べたを這う「かずら」に引っかかって倒れこみ、左手首を骨折した。おまけに腸活に必要なサプリメントなるものを通販で早速手に入れて飲んだら、もともと便秘などという事には縁のない体質なため、むしろ腸が驚いて活動過多になり、……色々まずいことになった。
「私、腸活は性になわないみたい」とさっさと腸活活動中止宣言。ま、このネズミ年のお方は、3日坊主で有名なので驚かないが、骨折したのに、もう運転している。「危ないじゃないの」と言ったら、「だって、整骨院の先生が指先が動くなら動かしておいたほうがリハビリが楽だって」。
今日も運転して整骨院に行くという。
「毎日行かなくていいんじゃないの?」というと、
「整骨院の先生イケメンなのよ」ですって。いそいそと出かける準備。
悔しきかな、恋活、先を越されたかな?