バグパイプを感じる旅<スコットランド> by Miruba
2017年夏のこと、私はスコットランドに向かった。
その前の年、テレビで「スコットランド夏の祭典ミリタリー・タトゥー」を見て「実際に見てみたいわね」と呟いた私の願いを伴侶さんが小耳にはさんでいたらしく、今年パリの自宅に戻ったときに「予約いれておいたよ」とおっしゃる。
「え? 何に?」 すっかり忘れていた私は一瞬返事に詰まる。
むっとした風の彼が「エディンバラ!」と言ったので思い出した。
「ああ~~っ! TATTO~~ 行く行く~~っ」と、大声で答えた。
8月17日、パリを発つ飛行機の中で2時間ちかく待たされた。
日本では、待たせた乗客の気分を和らげるためにあるプロ歌手が機内のマイクを使い一曲披露してくれたそうだが、残念ながらそのような歌手は乗り合わせておらず、日本と違い遅延に対するお詫びの言葉一つなくひたすら待たされた。
やっと飛び立つ。エディンバラへのトランジットなので間に合うか?
機内のトイレには注射針を捨てるダストシュート! もちろんインスリンの時もあろうがドラッグの場合も認めてる?(怖っ
パリからロンドン経由でなんとか間に合ってスコットランドのエディンバラへ。
エディンバラは、後日滞在するので、とりあえず空港からレンタカーで一時間、スコットランド南西部に位置する人口58万のグラスゴー(GLASGOW)へむかう。貿易港、産業都市として栄えたスコットランド最大の都市だ。
ホテルの窓からの景色。夕暮れはすぐにやってきた。
「フィッシュ・アンド・チップス」イギリスに来たら食べたい定番メニューだ。お醤油があるともっとよいかも。
朝はあっという間に訪れた。
8月18日、早速街中へ。
大雨のなかケルヴィングロープ(KELVINGROVE)美術・博物館へ。
ここには、ゴッホやルノワールなど印象派のいままでみたことのない作品があり、興味深かった。
グラスゴー駅、 グラスゴー市庁舎、 グラスゴー大学
急な雨で、教会に逃げ込もうと思ったら扉が閉まっていた。軒先をお借りする。
フランスやイタリアなどの教会のファサードには彫刻など美しく飾られてあるものだが、ここには何も飾り気がない。(もう一枚の写真は典型的な彫刻のあるフランスの教会)
天井が船底の形をしている。航海術に長けていたので教会の天井に、応用したのにちがいない。
3時過ぎ、そろそろティータイム、市庁舎ちかくのカフェを探した。だが、カフェバーというかアイリッシュパブのようなお店ばかりだ。そして覗いてみたお店のどこもビールやカクテルを片手に多いに語り合っている人たちの風景なのだ。言っておくが、ウィークデーの昼間午後3時である。
自由気ままなフランス人でさえ、余程のことがないかぎり午後3時には仕事をしている。早くても飲むのは5時過ぎのハッピーアワーからだ。
ちょっと高級そうなカフェパブに入ってみた。止まり木タイプの椅子とテーブルがほとんどだ。きちっとしたスーツやブランド物で着飾った近くのサラリーマン・サラリーウーマンらしき人たちで、広い店内の席はほぼいっぱい。
胸にコサージュを付けてる紳士がいる。結婚式の帰り? と思ったら、あちこちのテーブルの横にコサージュを胸に付けた様子の良い紳士が立っている。
私達の隣に二人の中年女性が止まり木に座ってカクテルを頼んだ。だがなかなか口にしようとしない。
そこに飲み物をもってコサージュの男性がやってきて、「あと10分ぐらいで来るから待っていてください」と言うと別の席に戻っていった。
残った女性はそれを聞いてようやく飲みはじめた。
なるほど、コサージュの紳士たちはどうやら、ホストのようだ。
自身も飲みながらお客様の話に加わったり相槌をうったりお代わりの注文をカウンターに取りに行ったりしている。
バーカウンターではバーテンダーが振るシェーカーの音が絶え間なく聴こえてくる。
もう一度時計を見てしまう。やっぱり3時半。ん~~スコットランドって酒飲みの町だったのか。
私もつい、お店のオリジナルカクテルなんぞ頼んでしまった。連れは、運転をするので、ロイヤルティーにしたが……。
8月19日英国人の住みたい街コンテストで毎回第1位に選ばれるというパース(PERTH)という街へ行く。
人口4万3千、13世紀から15世紀までスコットランド王国の首都だった。何処までもまっ平^^雲行きが怪しい。
スコーンの町は2件長屋が何処までも続く。
ピンクの花が道路際にずっと咲いていた。
スコーン城の入り口、ここから10分も車で行かなとたどり着かない。
スコーン城。飾り気のないお城だこと。だが由緒あるお城で、スコットランドの歴代の王様が戴冠式をやった場所が、このスコーン城なのだそう。ストーン・オブ・スコーンという石の上に座り王冠を授かったというのだが、その石の形を真似たお菓子をスコーンとなずけた。スコーンというパンの、発祥の地とも言われている。
有名な運命の石のレプリカ。ツタンカーメン王の玉座の下にあった石なのだそう。 代々、国を護る王に継承されていたが、戦争でエジプトからヨーロッパに渡り、その国の王様の玉座として500年頃イギリスのアイルランドへその後スコットランドの王が持っていたが13世紀に戦勝品としてイングランドに奪われロンドンのウエストミンスター寺院に置かれていた。
1996年、トニー・ブレア政権時、イングランドからスコットランドへ700年ぶりに返還され、イングランドとスコットランドの感情のもつれの解消のひとつとなったらしい。
そんな深い歴史のなかで大切にされるほど、貴重ないわれを持つ石。なのに、そこらへんに野ざらし。うっかりすると見落としてしまいそうな石だった。ま、レプリカだし、700年も前の石が「偽物じゃない」と思うほうがね~~
スコーン城を後にしてアバディーンに向かう途中、移動博物館に出会った。クラッシックカーの集まりで、特に、蒸気トラクターのコレクションが一斉に集まった、という感じだった。蒸気トラクターが延々と並んでいる。
一路アバディーンへ。アバディーンは花崗岩がとれるので、どこまでも花崗岩でできた灰色の長屋住宅が延々と続く。
ホテルに着くとさすがにドライブ疲れで、レストランで食事する気になれない。スーパーで買い物をして部屋で食べることにする。カップ春雨スープとカップ焼きそばを売っていたので買ってしまったが、結局食べずにパリの自宅まで持って帰ってしまった。日本製のカップ麺を日本で買わずイギリスで手に入れパリで食べるの図。
8月21日、エディンバラ城を見る。
屋根がやはり船底みたい
会場に向かう通りには、すべてバリケードがあった。テロ対策だ。
エディンバラはスコットランドの首都、イベントが開催されるようになったのは1950年。
やっと目的の日がやってきた。1950年から続く、スコットランドの軍楽祭『ロイヤル・エディンバラ・ミリタリー・タトゥー』を観に来たのだ。
「タトゥー」は刺青のことではなく、軍隊の「帰営ラッパ」のことだそう。
第二次世界大戦以降の復興期に、国民を元気づけるべくスコットランドとイングランドの連隊が公演を行ったのが起源。その後、徐々に世界からの注目が集まり、現在は40カ国の軍隊や自衛隊が参加する一大イベントとなりチャリティーにもなっている。
毎年8月上旬~下旬の夜間に開催されるが、会場であるエディンバラ城前広場には、毎年約22万人が集まるとのこと。スコットランド軍楽隊とタータンチェックのキルトを身につけた兵士たちが、バグパイプの音色とともに整然と、ライトアップされた城の前を行進する。
2017年8月、この歴史ある軍楽祭りに、日本の陸自中央音楽隊が初参加した。和の雰囲気をこめ、陸自の歌姫が美しい声を披露した、実際に観ると迫力があった。
全体主義ではないし、軍隊が活躍するような世界情勢や、災害はないほうがいいが、この兵士たちの統率のとれた制服姿、演奏には迫力があったし、素晴らしいと感じた。
<↓このときの日本の自衛隊のパフォーマンス。約7分間の動画でお楽しみいただけます>
新しい発見のあった楽しい旅だったが、旅の終わり、帰りの飛行機はまたも揺れに揺れた。
ふ~~。