第4回 コール&レスポンス・ライブ性の高い音楽
「 セックス・マシーン」by ジェイムス・ブラウン
さて、皆さん!
今回は、前回の終盤に触れたジェイムス・ブラウンの曲から始めましょう。
通称JB、ファンクの帝王とも呼ばれたアメリカのソウルミュージックの歌手でエンターテナーです。
動画は、イタリアでのライブの模様です。1分ほどのオープニング曲が終わってから始まる曲が聞いていただきたい曲です。
注目すべきは、向かって左側の人物との掛け合いです。JBの声に呼応して叫んだり、歌うこの人は、ボビー・バードと言います。JBの長年の相棒で、彼が音楽の世界に入るのを手助けした人です。さて、呼び掛けてそれに応答するように、交互に発声するパターンを音楽用語で「コール&レスポンス」と言います。これも黒人音楽の特色です。
1:30のあたりから、コール&レスポンスが始まり、歌に入っていきます。
アフリカや世界各地の民族音楽や、ゴスペル、そして労働時に歌われるワークソングにも、コールアンドレスポンスが見られます。ヨイトマケの唄を思い出してください。リーダーが「父ちゃんのためな〜ら」とコールすると、みんなが「エーンヤコーラ」とレスポンスします。
教会で牧師の説教に応える会衆。古い弾き語りのブルースでも、自らの声とギターがコール&レスポンス状態になる様式がありますし、ジャズのインタープレイというものも掛け合いです。女性ファンが多かったソウル歌手マーヴィン・ゲイのライブ盤には、曲の歌い出しに熱狂する女性ファンの歓声が押し寄せる波のように聴こえます。これもまた、コール&レスポンスでしょう。
アフリカまで遡ると、トーキングドラムと言って、遠くにいる人と太鼓の演奏で“会話”するそうです。そのDNAとまでは言いませんが、寄り集まって、歌ったり踊ったり、即興の演奏や歌から黒人音楽は始まった面もあります。他人に聴かせる局面や他人と即興で合奏する局面が、ブラックミュージックのエンターテイメント能力、ライブ能力、コール&レスポンス能力を鍛えたとは言えないでしょうか。
JBの曲自体は、熱気を孕みながらも、どこかクールな部分を感じさせます。サウンド全体が主要なリズム・パターンを繰り返す事で、一種のトランス状態が発生し、リスナーに持続的快感をもたらすのがポイントです。熱気だけでは持続しませんからね。後にヒップホップ系のミュージシャンがこぞってJBの曲をサンプリングしました。JBが「勝手に使っていい」と宣言した事もありますが、何よりこの“ループ感”をリスペクトしていたからでしょう。
JBは年間のライブが相当な回数でした。ブルースを広めたB.B.キングもそうでした。二人が凄いのは、どのライブ盤を聴いても同じように聴こえる事です。常に満足のいくライブを提供するミュージシャンシップは素晴らしいものがあります。彼ら側からすれば、観客とのコール&レスポンスを堪能していたのかも知れませんね。
それでは、また!
ソウルの神様ともいわれるレイ・チャールズの「I CAN'T STOP LOVING YOU」。
ここまで読まれたあなたなら、ゴスペルや、コール&レスポンスの
要素が、この曲にも、入っているのが分かりますね。
映画『ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』が
2016年6月18日(土)から全国ロードショー予定です。
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