その14 ベッドは家具ではありません

1988年のソウルオリンピックをきっかけに韓国人の寝場所はオンドルの上の布団から、西欧式のベッドへと急速に変化した。
 
オンドルとは台所の余熱を利用したのが起源だと言われるが、現代では殆んどガスによる床暖房のことを指す。
 
さて、総合家具メーカーはこの機に乗じて嫁入り道具の家具と調和したベッドを作り、セット販売でかなりの成功を収めたそうだ。危機感を感じたあるベッド専門メーカーが1993年に打ち出したキャッチコピーが「ベッドは家具ではありません。科学です」だった。
 
このキャッチコピーは韓国で爆発的に流行し、今でも少女時代や有名俳優たちがこのセリフを使ってベッドのCMに登場している。TVCMが流れ始めた当初、小学校のテストでは「以下の選択肢のうち家具でないものは何ですか?」の問いに「ベッドです」と答えた小学生が居たという逸話もある。
 
「ベッドは家具ではありませんのような広告」とは「キャッチーな広告」と同義であり、今でも韓国人の間では十分通用する言葉なのだ。因みにこのコピーを考案したライターは、前与党セヌリ党の改革委員の要職に就いていた。
 
ところで、韓国の布団は暖かい床に敷くためか掛け敷き共に日本人の感覚からするとかなり薄い。床の質感を直接体感できるほどで、慣れるまで安眠は難しい。それとは逆に韓国の特に年配の人々が、ベッドマットの柔らかさに適応できず、開発されたのではないかと想像するのが韓国式ベッド「ドル・チムデ(石ベッド)」だ。
 
先のキャッチコピーを初めて耳にした時「ドル・チムデ」を即座に思い浮かべ、韓国のベッドは確かに家具じゃないよなあと、一人早合点したのだった。

 

石ベッド