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その12 変化するハングル使用率

ハングルは李氏朝鮮第4代セジョン王(在位1418~1450)が発明したとされ、1446年に同王によって公布された。(日本では『ハングル文字』と呼ぶこともあるが「ハン」が1つ「クル」が文字という意味なので『ハングル』とだけ呼ぶのが正しい)
 
現在韓国内で使用されている文字の殆んどがハングルである。たまに漢字を目にする機会と言えば、名刺の氏名部分や看板、冠婚葬祭の花飾りに「祝・華・謹・忌」等を見かけるくらいである。
 
ハングルは考案当初、漢文を使用していた両班(ヤンバン)という特権階級層に「~唯蒙古・西夏・女眞・日本・西蕃之類、各有其字、是皆夷狄事耳、無足道者」(~モンゴル・西夏・女真・日本・チベット等は固有の文字を持つが、未開人のなすことで、取るに足りない)と反発されたうえ、中国の威光を盾にハングル使用を阻止しようとする勢力もある中での公布だった。
 
「刊経都監」(1461)が設置され、仏教経典が次々とハングル翻訳されるなど、李朝初期にはハングルを使用した文献が多いが、その後、燕山君(在位1494~1506)によりハングル使用者処刑等の弾圧があり、その後継者中宗(在位1506~1544)も公式な場でのハングル使用を禁じた為、公文書にハングルは無くなったが、漢字使用者以外の層へのハングルは確実に浸透していった。
 
近代のハングル転換点は、民族意識高揚を背景に、朝鮮初の近代新聞(官報)『漢城周報』(1886年創刊)が漢文の他にハングルのみによる朝鮮文を採用した時と言われるが、正式に公文書でハングルを使用するようになったのは、1894年11月に公布された勅令一号公文式からになる。
 
現在、文字はハングルだけになりつつあるが、朝鮮語にはいくつかの語源がある。主なものは中国語由来・日本語由来・純ハングルの3つだ。現在も日本語由来の朝鮮語が結構残っているようで、韓国内の外国人向け韓国語講座でのことだが「チェソはヤチェ(どちらも野菜を意味する)とも言えますか?」と尋ねたところ「ヤチェは日本語由来なので使いません」と冷たく言い放たれドキリとした。更なる民族意識の高まりと純ハングル増加を予感した出来事だった。
 
と、数年前に書いたのだが、私の予測は半分外れた。法律書や医学書等の学術書の多くが日本語から翻訳されていることもあり、専門書を読む人々は政府の意図に反して漢字を全てハングルに置き換えようとはしなかったし、2015年10月には新聞の社説に「漢字教育こそハングルを育てる道」という記事も出た。しかし、1970年代つまり現大統領の父パク・チョンヒ大統領の頃から学校で漢字教育がなされなくなったせいか、学校教育に漢字学習を戻すことにパク・クネ現大統領はあまり乗り気でないらしい。
 
一般人が漢字を自由に使いこなせるようになると、困ることでもあるのだろうかと疑いたくなる。