第4回 八大地獄案内1 

ではいよいよ、八大地獄のそれぞれについて、どんな刑罰が行われているのかどんな場所なのか見ていくことにしましょう。

1、等活地獄。

互いに憎みあい、傷つけあう地獄です。
 この地獄に落ちた罪人は、鉄のような爪を持ち、罪人同士が出会うと、その爪でお互いの身体を引き裂き合い、血肉がなくなって、骨になるまで戦い続けます。また、地獄の獄卒(鬼)が、鉄の杖や棒で、罪人の身体を頭の上から足の先まで、徹底的に叩き潰したり、鋭い刃物で、細切れに一寸刻み、五分刻み、にされます。
 
時折、涼風が吹き抜けたり、空から「よみがえれ」と声がかかると、互いに殺しあったり、獄卒に殺された罪人達がまた生き返り、延々と苦しみを受け続けることになります。
等活、という名前はこの空からかかる声が「等しく活へる(すべて蘇る)」と告げることからでしょう。尚、他の地獄の説明に、この蘇ることについての記載はありませんが、先に記した通り、他の地獄の苦しみは、この第一層の等活地獄の苦しみを基準に10倍、100倍…と増えていくとされていますので、他の地獄でもやはり殺されても、生き返り、責め苦を受け続けているのでしょうね。
 
ところで地獄の獄卒とは、牛頭馬頭、とよばれる牛や馬の頭をした鬼とされています。牛、馬だけでなく、羊や、虎、狼、鶏などの頭をしたものもいます。
 

2、黒縄地獄

熱した鉄を使った刑罰がたくさん出てくる地獄です。
獄卒が罪人を捕まえて、熱した鉄の上に寝かせると、同じく、熱した鉄でできた墨縄(大工さんが使うやつですね)で、罪人の身体に升目を刻み、その升目に沿って、鉄の斧でさいころ状の肉片に切り裂いてしまいます。斧の代わりに鋸や刀が使われることもあります。また、熱した鉄の縄で作った網の中に突き落とされます。激しい風が吹き、突き落とされた罪人の身体は、熱い鉄縄の網に押し付けられ、もがけばもがくほど、網に絡まり、肉や骨まで焼け焦げてしまいます。
更に、鉄の山の間に鉄の縄が張られ、罪人は重い鉄の荷物を背負わせれて綱渡りさせられます。縄の下には湯の煮えたぎる釜が幾つも用意されていて、バランスを崩した罪人が落ちると、釜で罪人は煮られてしまいます。
 

3、衆合地獄

衆合とは、互いにぶつける、打ち合う、群れる、等の意味で、その名の通り、押しつぶされたりする刑罰が多いです。
獄卒が、罪人を向かい合った鉄の山の間へと追い立てると、両方から山が迫ってきて押しつぶされてしまいます。鉄の山は空からも落ちてきて、罪人は下敷きにされてやはり粉々に押しつぶされます。更には、鉄の臼に入れられて、鉄の杵でつかれます。
凶悪な鬼や、熱した鉄の獅子や虎狼などの獣、烏、鷲などの鳥がいて、罪人は身体を食われます。それだけではなく、はらわたを取り出され、樹木の先に引っ掛けられて、燃える鉄の嘴を持った鷲に啄ばまれます。
大きな川があり、その中に吊るされている燃える鉄の鉤に罪人は吊り下げられたり、川の中を流れる熱く溶けた赤銅の流れの中に投げ込まれます。
獄卒に追い立てられ、罪人は、葉が鋭く尖った刃になった樹木の林の中に追い込まれます。樹木の頂上に美しい女性がいて罪人を誘惑するので、罪人は刃の葉で身体を切り刻まれながら、木の上まで登ります。しかし、せっかく木の上に上っても、女性は、木の根元へと降りていて再び誘惑の言葉を罪人に語りかけます。情欲で目がくらんだ罪人が、再び身体を切り裂かながら、木を降りと、また女性の姿は木の上に。こうして、罪人は身体を切り裂かれながら、木を延々と上り下りすることになります。
この地獄は「邪淫」の罪を犯したものが落ちる地獄であり、最後の刑罰は非常に象徴的ですね。
 
そろそろ、読むのも辛くなってきたのではないでしょうか。まだまだ強烈な地獄が続きますが、今回はこの辺で。










図はクリックすると拡大します。
凄惨な地獄模様ですので、閲覧注意です。 


江戸から明治にかけての浮世絵師、河鍋暁斎の地獄絵図

地獄草紙(12世紀頃)

鳥や動物に喰われている 地獄草紙(12世紀頃)


木の上では美女が誘惑、下からは鬼が追い立てている。