ショートショート

犯人は?   by 夢野来人

「警部。殺人犯の容疑者は三人です」
「そうか。で、犯人はわかっているのか」
「いいえ。ですから、容疑者が三人おりまして」
「なんだ、わかっていないのか。コ○ンボとは展開が違うな。では、いつものメガネをかけた少年を呼んでこい」
「そんな少年いませんよ」
「コナ○もいないのか。こいつは、難事件だぞ」
「まだ、捜査すらしていないじゃないですか。犯人を推理するのが、警部の仕事でしょう」
「推理と言えばこの男。着物姿で変な帽子をかぶった…」
「だから、いませんってば」
「金○一まで、おらんのか。迷宮入り寸前だな」
「警部。いいかげん、自分で推理してくださいよ」
「そうか、しかたがないな。警部の推理はなかなか当たらないのだがな。それは、小説やテレビ、映画が証明しておる。それでも、どうしてもわしに推理しろというなら、やってやる」
「警部、逆ギレですよ。それが本来の姿」
「わかった。どうなっても知らんぞ」
「そんな、投げやりな」
「まあ、良い。では、アリバイから聞こうか」
「そうこなくっちゃ。三人の中でアリバイのない者が二人…」
「ようし、わかった」
「何がです?」
「犯人だよ」
「まだ、名前すら言っていませんよ」
「いや。犯人は容疑者の中で、アリバイのあるやつだ」
「証拠でもあるのですか」
「もちろんだ。一人だけアリバイがあるのが、何よりの証拠」
「そんな無責任な」
「それは、小説やテレビ、映画が証明しておる」
「………」



「ようし、わかった」