「ワタシハ、ゴゾンジノヨウニ、ワイフロイド1ゴウノカイリョウガタアンドロイドデス。ゴシュジンサマ、ナンナリトゴヨウヲ、モウシツケクダサイ」
ワイフロイド1号をひどく気に入ってしまった私は、ワイフロイド2号に非常に興味をひかれたので、すぐに購入してしまった。
「おまえ、ほんとうに1号の改良型なのか」
「ハイ。キオクヨウリョウ1000バイ、イドウスピード3バイ、オテツダイノウリョクムゲンダイトナッテオリマス」
どうもピンとこない。何がピンとこないかと言えば、まず話し方である。1号はまるで感情があるかのごとく、こちらの気分を高揚させるにたる何かを持ち合わせていたが、こいつときたらまるでダメである。ただのカタコトの日本語ではないか。
「なんで、おまえはそんな話し方しかできないのだ。1号はもっと流暢な日本語だったぞ」
すかさず、2号は応えた。
「ナニヲオッシャイマスカ、ゴシュジンサマ。1ゴウハ、ニホンゴシカハナセマセンデシタ。ソレニヒキカエ、ワタシハ、エイゴ、ドイツゴ、フランスゴヲハジメ、ロシアゴ、ハングルゴ、チュウゴクゴ、ナドナドセカイジュウノアリトアラユルゲンゴニセイツウシテオリ、ハカタベンスラ、ハナセルトデス」
まあ、確かに記憶容量1000倍ともなれば、それぐらいのことはできるかもしれないな。
「わかった、わかった。じゃあ、2号。ちょっとこちらへ来てくれ」
「ハイ、ゴシュジンサマ」
2号は、移動し始めた。
ウィンウィンウィン。
「なんだ。おまえ、タイヤが付いているのか」
「ハイ。オカゲデ、イドウスピードハ、1ゴウノ…」
「3倍のスピードなんだな」
「ソノトオリデゴザイマス、ゴシュジンサマ」
速けりゃ良いってもんでもないな。だいたい、こいつには愛想ってものがない。
「なあ、2号。おまえは、無表情だよなあ。1号はニコッと笑ったり、やさしく微笑んだり、俺がなにかしていると、のぞき込んだりしてきたものだが、おまえにはそういう機能はないのか」
「トンデモゴザイマセン、ゴシュジンサマ。ワラエトメイレイシテクダサレバ、1ゴウノ三バイハワラエマスシ、ホホエメトイワレレバ、1ゴウノ5バイハ、ホホエメマス」
そういうと、2号は突然バカ笑いをして見せ、続いて微笑みの連続演技を披露した。
「気持ち悪いね、こいつ」
そして、私がタバコに火を着けようとしたした時である。
ジーッ。
「何だよ、急に!」
「ノゾキコムノダッテ、1ゴウノ10バイハトクイデス」
「何か、違うなあ。たとえば、俺がタバコに火を着けようとするだろう。すると、1号ならライターを差し出し、そっと火を着けてくれたものだ」
「ソンナコトナラ、オヤスイゴヨウデス」
そう言うと、2号は人差し指を差し出した。
「なんだ。おまえ、着火機能も備えているのか」
「ナニシロ、ワタクシハ、1ゴウノカイリョウガタアンドロイドデスカラ。サア、ドウゾ」
私は2号の差し出した人差し指の先に、くわえたタバコを近づけた。
ボーッ! ボーッ!!
突如、2号の指先からは火炎放射器のごとく、勢い良く炎が飛び出した。
「おい、こらっ。気を付けろ! ヤケドしちまうだろうが」
「コレコソ、ワタシノサイダイノカイリョウテンデゴザイマス。オテツダイノウリョクハ、1ゴウノ…」
「無限大…か」
「サヨウデゴザイマス」