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検索侍           by 夢野来人

いつの世にも便利屋ってのがいるものでして、今でこそインターネットの普及により、知りたいことが瞬時にわかるようになりましたが、昔は大変だったようでございます。情報が戦術を決める重要な役割を果たしているのは、今も昔も変わらないようでございます。


ここに一人の情報通のお侍がおりまして、ひとつのことを頼まれると、必ず3日以内には調べ上げてきてくれます。検索侍とでも申しましょうか。ある日、検索侍はお殿様から重大な指令を受けます。
つづく


リクエストがありましたので続きを掲載いたします。




「弱っちまったなあ。殿様もむちゃなことを言うもんだ。4日後に剣術大会が開かれる。その優勝者を調べて来てくれときたもんだ。だいたい、おかしいじゃねえか。調べものってのは、過去に起きた出来事や現在の動向とかを対象にしたものなんだ。未来のことは調べるなんて言わねえ。予想するって言うんだ。
確かに、剣術大会の優勝者を自分の家来から出したいって気持ちはわからないでもない。ならば、自分の家来を鍛えればいいじゃないか。4日後の優勝者を探しだし、3日後つまり剣術大会の前日に家来に召しかかえるなんてことは考えつかないでほしかった。いい迷惑というもんだ。っていうか、そんな予知能力があれば、おいらは富くじを買うよ。必ず当たる富くじをね。だってそうだろ、殿様のご褒美が富くじの一等賞金より多いとは思えねえ」


どうやらこのお侍、なかなか現実的な考えの持ち主のようでございます。
「それにしても、何らかの答を持っていかなきゃおいらの首が飛んじまう。その答が間違っていても、やっぱり首が飛んじまうなあ。どうしたものだろう」
お侍の首は、もはや風前の灯火でございます。
「そうか。そうだな、この手があった」
何かひらめいたようでございます。


リクエストがありましたので続きを掲載いたします。


そして、いよいよ剣術大会の前日でございます。
「明日の剣術大会の優勝者は、必ず我が藩から出さねばならぬ。その方、わかっておるな。もしも、よそ者に優勝を奪われるようなことがあらば、おぬしの首はないと思え」
「承知いたしております」
覚悟を決めたのか、お侍は落ち着いたものでございます。
「では、聞こう。明日の優勝者は、いったい…」
「お待ちください、お殿様。私にひとつ考えがございます」
「なんじゃ、言うてみい」
「ははあ、おそれいります。本日、16名ほどのものを我が藩に召しかかえていただきとうございます」
「なに奴じゃ」
「明日の剣術大会の出場者にございます」
「ほほう、考えおったな。じゃが、そんなことではごまかされんぞ。良いか、もう一度だけ言うぞ。明日の剣術大会の優勝者は誰じゃ」
待ってましたとばかり、お侍の顔は怪しい光りを放ち、こう答えました。
「もう一度、しかと承りました。3日もいただければ必ずや…」
お侍の顔である18インチディスプレイは、検索画面に移りました。


★☆★☆リセット、検索条件更新、対象:明日の剣術大会優勝者、期限:3日以内、実行★☆★☆


つづく