第9回 グルーヴィーな音楽
「インナー シティ ブルース」 by マーヴィン・ゲイ

 
さて、皆さん!
 
今回は、“グルーヴ”についてです。
人によって定義が異なる言葉で、つかみ所のないお話になるかもしれませんが、論より楽曲。聴いてみましょう。カリスマ的なソウル・シンガー、マーヴィン・ゲイの曲です。彼は歌唱力だけでなく、サウンド・クリエイターとしても高く評価されています。



この曲、メロディーがキャッチーだったり、乗りが良かったり、というのとちょっと違いますよね。リズムの繰り返しが淡々としているけれど、独特のムードがあります。ダンサブルというより、自然と身体が揺れる感じです。グルーヴの語源は、レコードの溝だそうです。レコード針が、波やうねりのように小さく上下しながら、レコード盤の溝をゆっくりたどっていくイメージと、ゆったりと身体を揺らすイメージに共通したものを私は感じます。
この感覚は“ファンキー”という捉え方も有りでしょう。リズムの繰り返しが、トランス状態を作りあげ、快感を持続させますね。これはアフリカ由来かも知れません。
アフリカのジェイムズ・ブラウンと言われたフェラ・クティの演奏を聴くと、太いうねりが延々と続き、豪快なグルーヴを作り出しています。
チャック・ベリーなどと並びロックンロールの生みの親の1人とも言われるギタリストで歌手のボ・ディドリーは、ボ・デイドリービートと呼ばれるビートで有名なのですが、聴きようによってはこれもアフリカ的、呪術的といえます。
 
単発のヒット曲を量産する「モータウン」というブラックミュージック専門のレコード会社にあって、マーヴィン・ゲイはテーマを持ったトータル・アルバムを志向しました。内容は、常に自分の生活や想いに立脚したもので、シャレた感覚と艶っぽさの中に見え隠れする繊細さ、彼の人間性そのものが、グルーヴ化されている感じです。
 
グルーヴは呼吸や心臓の鼓動といった生命の証が音楽化されたもの・・・ここまで言うと言い過ぎでしょうか。
 
それでは、また!
 
アフリカのジェイムズ・ブラウンと言われた
フェラ・クティのパフォーマンス


ボ・デイドリーの生み出したロックミュージック。
曲のタイトルもボ・ディドリー